将来に向けてより多くの
歯を残すための歯周病治療
To leave more your teeth
歯周病は、成人以上の多くの日本人が罹患しており、特に30代後半から進行しやすい傾向があります。
初期には痛みのような分かりやすい症状が現れないため、気が付いた時には歯を支えている
骨が溶けた重症になっており、抜歯に至ることが多い病気です。
生涯に亘って自分の歯を使い続けるためには、歯周病予防が特に重要であるといわれています。
STEP 歯周病の進行
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歯肉炎
歯周病菌の増殖によって歯肉が炎症を起こしている状態です。歯を支えている骨などの歯周組織には影響が出ておらず、歯茎がしみる、歯磨き時に血が出るなどの軽症にとどまっています。ごく初期の段階であるため、歯磨き指導で患者様がしっかりとお口のケアをできるようになり、歯科医院で簡単なクリーニングを受ければ、十分に改善が見込めます。
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軽度歯周炎
歯肉の炎症が悪化して腫れあがり、歯と歯茎の間の溝が深くなって歯周ポケットができた状態です。歯の表面に歯垢が固まった歯石が沈着していることが多く、専用の機器を用いた歯石除去が必要になります。ブラッシング指導も並行して行うことで、症状の進行を食い止めることが可能です。歯茎がしみる、歯磨き時に出血するなどの自覚症状が現れます。
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中等度歯周炎
炎症が歯槽骨などの歯周組織にまで及んで溶け始め、歯周ポケットがより深くなったことで、歯の根本近くに歯石が沈着している状態です。歯を支える組織の破壊が進んでおり、早期に治療をしなければ抜歯になる可能性があります。自覚症状は、歯磨きをする時に血が出る、口臭がある、歯肉に痛みを感じるなどです。
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重度歯周炎
天然歯を支えている歯周靭帯や歯槽骨などの歯周組織が破壊されて、歯がぐらついている状態です。歯が歯肉に刺さっているだけの状態なので、噛むだけで痛みを感じます。その他にも、歯周組織が膿んでいるために口臭や膿の味がするなどの症状も出てきます。この段階になると、歯周病菌が血管内に入りこんで心筋梗塞などの原因となるため、抜歯を選択するのが一般的です。
FLOW 歯周病治療の流れ
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FLOW歯周基本検査
歯周基本検査では、歯と歯茎の境目にある歯肉溝が炎症によって深くなったことでできた歯周ポケットの深さを計測することで、症状の進行度合いを確認します。歯周ポケットの深さに合わせて治療内容が決まるため、通院期間中には繰り返し行われる重要な検査です。
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FLOW歯周基本治療
歯周病は、歯周病菌が増殖して歯茎の炎症を起こしているのが原因です。そのため、患者様へのブラッシング指導と、歯ブラシでは取り除けない歯石を専用の機器で除去するスケーリングを行うことで、炎症を抑えるのが治療の基本となります。
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FLOW再検査
ブラッシング指導とスケーリングの効果が出ているのかを確認するために、再度検査を行います。歯周ポケットの数値に異常値がなく、歯茎の炎症が認められなければ、歯周病治療を終えて定期メンテナンスに移行します。効果が現れていない場合には、歯周病治療を継続します。
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FLOWSRP
SRPとはscaling(スケーリング)+ルートプレーニング(root planing)を略した言葉で、深くなった歯周ポケット内に沈着している歯石やバイオフィルムを、専用の機械や器具で除去することをいいます。歯列の隅々まできれいに掃除することで、細菌の内毒素の影響を取り除くことが可能です。患者様がしっかりと歯磨きをできていれば、あまり痛みを感じることなくSRPを行うことができます。
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FLOW再検査
SRPの効果が出ているのかを確かめるために、歯周ポケットの測定による再検査を行います。正常な回復が見られる場合にはメンテナンスへ移行し、まだ歯肉からの出血などがある場合には、更なる治療が必要です。
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FLOWメンテナンス
一度歯周病によって破壊された歯槽骨などの周辺組織は、自然に元に戻ることがありません。そのため、症状を再発さないためにも、数カ月に1度のメンテナンスを受けることが、歯を残すためには重要です。口腔内のチェックで悪化の兆候を見逃さず、定期的なブラッシング指導と歯石の除去によって、お口健康をしっかりと保ちます。
歯周病の治療法
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ブラッシング指導
歯周病の原因である細菌をコントロールするには、毎日の歯磨きがしっかりと行われていることが重要です。そのため、お口のケアのプロである歯科衛生士が口内を確認して、患者様一人ひとりに合わせたブラッシング方法をご指導いたします。
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スケーリング
歯ブラシでは取り除くことができない歯石を、専用の器具を用いて除去することをスケーリングといいます。毎日しっかりと歯を磨いて歯茎の炎症が治まっていれば、痛みの少ない処置が可能です。
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SRP
SRPはスケーリング・ルート・プレーニングの略であり、主に深くなった歯周ポケットの中にできた歯石の除去を指します。歯周病の進行が進み、スケーリングだけでは治療効果が見込めない場合に行われています。
お薬で細菌を退治する
歯周内科をご紹介
位相差顕微鏡による検査
患者様の口内に存在する歯周病細菌の種類や量を、位相差顕微鏡を用いて確認します。お口の中の汚れを少量採取して、顕微鏡で確認する簡単な検査です。位相差顕微鏡の検査では、カビ菌(カンジダ菌)やスピロヘータなどを確認することができます。
DNA検査
位相差顕微鏡よりもさらに詳細に細菌の種類を調べられるのが、DNA検査です。歯に付いた歯垢を採取するだけで検査ができるため、痛みを感じる心配はありません。歯周病細菌を見分け、その菌に適したお薬を選択することで、より良い治療効果が期待できます。
内服薬を服用してのSRP
位相差顕微鏡やDNA検査の結果を基に、感受性のある薬剤を用いて微生物の除去を行います。口腔内細菌の種類に合わせた抗生物質を服用することで細菌を効率よく排除することが可能になり、SRPの効果をより高め、歯周病の治癒率を上げることができます。
歯周病は全身の健康にも
関わる危険な病気です
近年、歯周病細菌が血管内に入り込むことで、全身疾患の原因となっていることが明らかになっています。
狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを始め、糖尿病の悪化を早めるともいわれており、お口の健康だけでなく命の危険に関わる病気なのです。
こんな疾患に注意
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糖尿病
重度の歯周病時に原因細菌や歯周病菌が血管内に入りこみ、全身をめぐってインスリン抵抗性(インスリンの作用を減退させる効果)を上昇させることで、糖尿病の発症や悪化を促しているといわれています。また、糖尿病によって免疫力が落ちることで歯周病細菌が増殖し、歯周病を悪化させているという相互関係にあります。
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血管障害
歯周病細菌が血管を刺激して、動脈硬化を誘導する物質を発生させることにより、狭心症や心筋梗塞などの血管障害に繋がっているといわれています。心筋へ血液供給がされなくなり、死に至るリスクがあります。
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早産・低体重児出産
妊娠中の女性が歯周病に罹患している場合、早産や低体重出産のリスクが高くなる傾向があります。歯周病菌が作り出す炎症性物質が分娩を促進させる作用があるためと考えられており、喫煙や飲酒のリスクに比べても非常に危険性が高いと言われています。赤ちゃんが元気に生まれてくるためには、妊娠前から歯周病の治療と予防に取り組む必要があります。
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誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、食べ物や飲み物、異物などを誤って気管や肺に飲み込むことが原因で発症します。呼吸器官は、咳をすることで異物が入りこまないようにする機能があります。しかし、加齢などが原因で嚥下機能が衰えると、異物と一緒に細菌が入りこみ、肺炎を引き起こすきっかけになります。誤嚥性肺炎を予防するためには、日ごろから口内環境を清潔に保ち、歯周病をコントロールしておくことが重要です。
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認知症
歯周病菌が血管内に入ると歯周病菌が細胞に刺激を与え、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβという物質の産生を促し、さらにそれを脳へ取り込ませやすくする可能性があるということが近年の研究でわかってきました。このことから、歯周病を治療することで、認知症の抑制に繋げられることを期待されています。
予防が何よりも大切です
歯周病の原因細菌は口内に常に存在しているため、誤ったブラッシング方法や歯並びの影響から、いつでも・誰でも発症するリスクがあります。そして、一度歯周病を発症すると、できてしまった歯周ポケットや、破壊された歯周組織を元通りの状態にすることはできません。
生まれ持った歯を長く使い続けるために、歯周病をしっかりと予防し、発症してしまった場合には、定期メンテナンスを受けて口内環境を維持することが大切です。